同乗者が酔わない運転のコツとは?・・・まずは「急」がつく動作、「急ブレーキ」、「急加速」、「急ハンドル」はNG。(所員:隠岐麻里奈)

2018.10.28

 突然ですが、車酔いはなぜ起きるか知っていますか?
 その答えは、目で見た感じや体で感じる感覚と実際の動きにズレがあると酔いやすくなるそうです。この答えがわかれば、おのずと同乗者が酔わないための運転方法が分かります。
そこで、安全運転ドライビングレッスンの校長を務める元レーシングドライバー・自動車評論家の太田哲也氏(当ラボ所長)に、聞いてみたいと思います。本日のテーマは、運転手が、ちょっとした工夫で同乗者が酔わないための運転方法です。

 まずは、「急」がつく動作は行わないようにする。「急ブレーキ」、「急加速」、「急ハンドル」などがそれにあたります。

 では、具体的には、どうすればよいのでしょうか?
「ブレーキングについては、踏み始めは軽いタッチで、それから徐々に踏み込み強めていくのがいい」と太田哲也氏。
 例えば、次の信号が赤だとわかっている場合、まずは早めにアクセルをオフにします。すると燃料消費量がゼロ近くになります。そして、それから軽いタッチでブレーキを一定にかけ、停止前動作ではフットブレーキ踏力をゆるめて同乗者がいつ止まったか気付かないように停止線で止まれば完璧です」
 つまり、停止線のところでピタリと車が止まるというのが理想です。
 では、停止してからの動き出しはどうでしょうか。
「加速をする時も同様で、アクセルをいきなりガツンと踏まず、踏み始めは、ほんのペダル5ミリ程度にし、それから加速を始めるとスムーズな運転ができます」(太田哲也)

 これらの効果は何かというと、スムーズな運転になるだけでなく、同乗物に次の動きの「予測」となるヒントを与えることになるのです。つまり、この「予測」の動作があれば、同乗者は次に起こることに対する心の準備ができ、結果、酔いにくくなるという、というわけです。

 カーブにも応用できます。  
 では、「急ハンドル」はどんな場面で起きるのでしょうか?「一番は、コーナリングする際のハンドル捌きですよね」と太田氏。
「子どもの頃、遠足などで、山道を走る時、バスの中で、必ず酔ってしまったという経験はありませんか? 僕は、レーサーだというのに、子どもの時は車酔いするタイプだったんですよ」(太田哲也)。
 なるほど。では、運転者として同乗者を酔わせないためにはどうすればよいのでしょうか。
「ポイントは、カーブに差し掛かったら、ハンドルをいきなりガバッと切らず、ほんの少し早めに切り、車の向きが変わり始めたら、さらに切り足していくという方法です。車は、ハンドルを切ったらすぐに曲がるわけではないのです。厳密に言えば、ハンドルからシャフトに力が伝わり、ホイールが向きを変え、次にタイヤの形が変わり、車体が傾き始めて、車が曲がり始めるのです。つまり、この遅れ分を見越して、早めに少し切り始め、同乗者に曲がるんだよ、と教えてあげるようにすると、スムーズなカーブの曲がり方になります」(太田哲也)

 「スムーズな曲がり方」「スムーズな加速」「スムーズなブレーキ」をするためには、いきなりガバッと動作しないということがよいことだとお分かりいただけたと思います。最後に、その上で、ポイントとなる動作をアドバイス頂いたのでご紹介します。
「この一連の動きの最も大事なことは、ゆっくりやるということではないということです。あくまで、動作と最後の部分をスムーズに行うということです」

 煽り運転などマナーの悪い運転が引き起こす事故のニュースが後を絶ちません。しかしながら、今回お伝えした、同乗者が酔わない運転のコツは、引いては思いやりのある運転であり、運転手がこうした意識を忘れなければ、事故は減るはずです。皆さんも、ぜひ試して、実体験としてコツを掴んでいただきたいと思います。

取材・文/隠岐麻里奈(ラボ所員)

【関連ウェブサイト】
http://www.sportsdriving.jp

 

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