ハイテクよりローテクに自動運転車の可能性を見た!

2020.03.20

中山間地域(平野と山地の中間地帯で日本国土の7割を占める。多くは過疎地域)の道の駅を拠点とした自動運転サービスの実証実験を、国土交通省道路局が推進している。中山間地域の集落では、免許を返納して運転ができなくなった高齢者が急増し、路線バスが廃止され、買い物や病院に行けない状況が起こって存続の危機に瀕しているのだ。
 それを改善するため、路線バスに変わる交通機関を作ろうというのがこの自動運転車サービスだ。
 さて一般的に自動運転というと、目的は運転者の負担軽減や交通事故削減だが、現状では完全自動(レベル5)どころかレベル3や4も実現できていない。僕自身、モータージャーナリストの立場から、レベル3(運転者が本を読めるレベル)でさえ実現は困難ではないかと思っている。
 一方、こちらの自動運転車の目的は運転者の負担軽減や交通事故削減ではない。運転者をなくすことで、コストを下げるためである。現在、全国的に運転者不足で、雇うとなると人件費がかかり、ビジネスとして成り立たなくなるからだ。
 運転者はいないけれど、助手席に「見張番」が座っている。草や雪があって認識できないと停まるようになっている。そんなときは「見張番」が、助手席から手を伸ばしてボタンを押して運転を再開する。
 急に停まって危なくないかと言ったら、時速12km程度だから危ないことはないそうだ。

今回の自動運転車はローテクであり、だからこそ実現可能性が高そうである。高みを目指していつまでも実現できないよりも、目的や場所を絞ったことが功を奏したといえるだろう。

 (所長:太田哲也)