EV一辺倒でなく、いろいろあって、それでイイ!新型マツダCX60試乗 (前編)

2022.11.10

【一番のウリは3.3L直列6気筒の大排気量ディーゼルエンジン】

マツダ CX-5の後継モデルとして、マツダ CX-60がリリースされた。CX-5はノーズが尖ってウェッジがきいたスポーティな雰囲気だったが、CX-60はフロントマスクがいかつく角ばって、堂々とした印象となった。

一番のウリは、新開発の直列6気筒ディーゼルエンジンを採用している点だ。SKYACTIV-D 3.3と呼ばれるパワーユニットの最高出力は231psで、WLTCモード燃費は2WDの8EC-ATが19.6~19.8km/L、4WDの8EC-ATが18.3~18.5km/Lである。

今時、6気筒3.3Lなのである。一般的に大排気量化はいまの「ECO」の時代に逆行すると思う人もいるだろう。欧州プレミアムカーも4気筒が主流となりつつある。しかし、マツダの考えは「ECO」への逆行ではなく、むしろ「ECO」を追求した結果、大排気量化に行きついたのである。

エンジンの基礎研究に携わってきたマツダの人見光夫常務から直接に説明を受けたことがある。こうしたエンジンが世に出る前の話だ。エンジンはまだまだ非効率な面があり改善の余地が多くある。端的に言えば、ガソリンエンジンは排気量を小さくすると効率がよくなり、逆にディーゼルエンジンは排気量を大きくする方が効率が良いのだという。その理論を具現化したのが、今回のSKYACTIV-D 3.3だ。実際にSKYACTIV-D 3.3は、排気量1.8リッターのディーゼルエンジンよりも燃費がよいらしい。


排気量を3.3リッターにしてパワーを上げるのではなく、燃費の向上につなげるという考え方なのだ。マツダによると「高い出力に加え、余剰空気を燃焼改善に用いることで俊敏な加速レスポンスを実現し、高回転、高出力時のNOxエミッションの低減、リーン燃焼域拡大による熱効率向上」も同時に実現しているそうだ。それらのメリットにプラスして、エンジンの構造系を簡素にできることから軽量化を実現し、これがハンドリング性能の向上にも貢献しているという。

今後、EVが主流になればクルマ自体が排出するCO2は削減されるが、電気を作る面に注目して石炭を燃やす火力発電やエネルギー再生のことまでを考えると、必ずしも自動車全部のEV化が正解ではない。実際の航続距離の短さや充電の大変さなどユーザーの使い勝手まで考慮すると、現在の日本におけるインフラではEVのデメリットが解消できていない。

そうした中、選択肢の一つとして、大排気量ディーゼルエンジンの存在は大いに意義があると思う。たくさん空気を取り入れて余すことなく全部燃やしてあげるという発想でクリーンかつ低燃費を実現する。

社会的にも、EV一辺倒ではなく、さまざまな取り組みがあることが大切で、そういう意味でもCX60の意義は高いと感じた。やはり大排気量の余裕は運転する者にとってうれしいし、CX-60はエンジンだけに注目しても魅力的だと感じた。

*後編へつづく*

マツダ CX-60(SKYACTIV-D 3.3搭載車)

●全長×全幅×全高:4740mm×1890mm×1685mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:1790~1810kg
●エンジン形式:SKYACTIV-D 3.3
●エンジン排気量:3283cc
●最高出力:170kW(231ps)/4000~4200rpm
●最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1500~3000rpm
●使用燃料:軽油
●変速機:8EC-AT
●駆動方式:後輪駆動ベースAWDシステム
●価格:3,239,500円~4,658,500円