「なぜにGOGOスポーツカーにアウトランダー?いいんです、これで!」その2

2021.11.06

それで実際にサーキットで走って、どうだったのか?

そもそも雨のサーキットの攻略法は、滑らないように走るのではなく、滑ったのをコントロールするという走り方になる。

前輪が滑った場合は、アンダーステア状態となり、曲がりにくくなるため、ドライバーは荷重を前輪にかけてなんとか曲がる努力をする。

しかしアウトランダーは、そんなことをしなくてもハンドルを切るとすぐに曲る。

さらにコーナーの途中でもっと曲がりたいと思ってハンドルを切ると、グイグイ曲がっていく。

さらにさらに切るとドリフト状態に突入し、しかもそのコントロールもすごく楽なのである。

普通だと後輪が滑った場合、適量のカウンターステアをすばやくあてる必要があって、そこをミスるとスピン状態になってしまうのだが、アウトランダーは電子制御が効いて横滑り防止装置がババッと作動する前から、デバイスが作動して激しい挙動を抑えてくれるのだった。

この仕組みの秘密は、駆動配分と左右タイヤの回転差にある。ターンインのときは後ろに駆動力を多く配分し、FRっぽい挙動となって曲がりやすくするわけだ。

さらに内側タイヤにブレーキをかけ、外側と内側のタイヤに回転差を生じさせて、強く曲がる仕組みもある。

S-AWC(スーパーオールホイールコントロール)と呼ぶこのシステムは、かつて三菱の代表的スポーツカー「ランエボ」に搭載されていたシステムと同じ考え方に基づくものだ。ランエボはクルマを速く走らせるためだったが、新型アウトランダーは一般道での安全性を考えて採用している。

現在は多くのクルマで横滑り防止を目的とした電子デバイスが搭載されている。初期の頃のそのセッティングは、スピンさせないことが絶対命令的になっていた。でも、その分アンダーステアになってしまって、クルマが曲がらないことにもつながった。

僕の考えとしては、ユーザーにとって公道でクルマがスピンすることは怖いけど、曲がらないことも危ない。どちらかというと曲がらないことの方が、反対車線に飛び込むなど、大事故につながるリスクが高いはずだ。また雪道では曲がらないクルマほど怖いものはない。

しかし当時そのことを指摘すると、一部のメーカーやドイツの大手サプライヤーの技術者などは、統計数字を持ち出して反論してきたものだ。

最近は多くのメーカーで見直しが図れ、曲がることの大切さも重視されるようになってきた。良かったなと思う。

それでアウトランダーに話を戻すと、よく曲がる。けれども、だからといって滑りすぎることもない。常にコントロールされている。それが雨のサーキットで確認できた。そして安心してドリフト走行を楽しめた理由でもある。

~次回、その3につづく~

〇スペック
新型アウトランダー プロトタイプ

注:プロトタイプ仕様のため、量産仕様とは一部異なる場合があります。

●全長×全幅×全高:4710mm×1860mm×1745mm
●ホイールベース:2705mm
●車両重量:2050~2110kg
●エンジン排気量:2.4L
●モーター種類:ツインモーター
●エンジン形式:DOHC16バルブ4気筒
●使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
●駆動用バッテリー総電力量:20kWh
●駆動方式:ツインモーター4WD